創作において、大規模な戦争シーンは見せ場の一つである。
しかし、取材なしで1から戦争を構築すると、どうしても突っ込みどころが出来てしまいやすい。
本ページでは歴史上の有名な戦史を紐解いていく。
クレーシーの会戦 平原における優勢な重装騎兵に対する歩兵戦
騎兵に有利な平原において、歩兵を主体とした戦力で迎撃したのがクレーシーの会戦である。
前提条件
・時は1346年の百年戦争
・フランス軍は重装騎兵を中心とした軍編成をしており、イギリス軍は農民兵を中心とした軍編成で著しく戦力が劣っていた。
・戦場はなだらかな斜面が続く平原であった
布陣
(1)イギリス側
①イギリス軍は背後を森林に、なだらかな斜面に部隊を展開した。
②両翼に長弓隊を置き、司令部の後方には矢を補給する荷駄隊を設置した。
③長弓隊の前には落とし穴を掘った
(2)フランス側
①左右に展開したイギリス軍の長弓隊を目にして、長弓よりも射程と威力を持つ弩を持った用兵を前に出した。
②重装騎兵を後ろに置いた。
戦闘
(1)フランス軍の傭兵隊は弩によってイギリス軍の長弓隊を攻撃した。これに対抗してイギリス軍は一斉に空へ弓を撃ち、莫大な矢の雨によって傭兵隊は壊滅的なダメージを受けた。弩は射程と威力に長けているが、弓の速射力は弩の5~6倍あり、殲滅力は長弓の方に分があった。
(2)フランスの傭兵隊が遠距離戦で敗北すると、イギリスは狙いをフランスの騎士へと変更した。上空から降り注ぐ矢は位置エネルギーによって騎士の鎧も貫き、フランス軍は混乱に陥った。
(3)イギリス軍の長弓部隊を何とかしようとフランス軍の後衛から重装騎兵が飛び出したが、落とし穴によって長弓隊に近づく事は叶わなかった。
(4)フランス軍の重装騎兵は狙いを長弓対から歩兵部隊に変更し、中央部へ殺到した。しかし、左右の長弓隊からの集中攻撃により重装騎兵はみるみるうちに数を減らしていった。
(5)イギリス軍は徹底した遠距離攻撃を続け、フランス軍は撤退を余儀なくされた。
総論
(1)弩は長弓よりも射程が長く、威力が高いという武器のカタログスペックを過信した。フランス軍は戦場における長弓の速射性を正しく評価できなかった。
(2)イギリス軍の戦略は初めから一貫しており、決戦地の選定から部隊の展開まで全て正しく機能した。
(3)一見すると重装騎兵に有利な平原は、長弓隊にとっても有利な地形だった。
戦史の資料
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